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2010年11月30日 (火)

2010秋の読書メモ:新書編その1

 このブログを始めたとき、読んだ本の感想は全部書いておいて自分のための備忘にしようと思っていたのですが、いやあなかなか書けないものですね…というわけで随分読んだ本が溜まってきてしまったので在庫一掃で読書メモを。ちょっと多いので、まずは第一弾・新書編です。

 ところで、私の読む本はほとんど文庫か新書でハードカバーはよほどの事情がない限り買わないのですが、たぶん、いつも電車の中でしか読まないからなんとなくコンパクトな本にしちゃうのかなあ。あまり意識したことがないけれど。

政権交代論

政権交代論 (岩波新書) Book 政権交代論 (岩波新書)

著者:山口 二郎
販売元:岩波書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 これは夏の終わり頃、世の中的には首相が鳩山から菅に代わり、政権交代したのはいいけど民主党の想像以上の政権運営能力の無さに、有権者としてもなんかこれやっちゃったかも、という空気が流れていたころ。あらためて政権交代の意義ってのはなんだったっけと思って読んだ。
 本書は先にアメリカとイギリスの政権交代の状況を示した後、日本にとっても政権交代は重要である、だけど民主党にできるかな…という流れで、政権交代の意義と、政権交代という軸で見た2005-2008頃の政治状況を俯瞰するにはとてもいい本。ただ、最後のほうでは(当時小沢代表の)民主党が政権交代の意義を発揮する力があるかについてははっきりいって悲観的であり、結果的には今のところその懸念のとおりになっている。
 アメリカ・イギリスの政権交代の説明においては①政治の大きな方向性/対立軸と②スタッフ(官僚)のあり方に相当の説明をさいていて、日本の今後については③国民の支持をいかに得るかが重要と書いています。今の民主党は、①方向性としては全く具体性を欠いた大=理念(ex.友愛)とミクロの争点(ex.事業仕分け)で中間帯なしというアンバランスさ、②官僚とはケンカ別れというか相互不信状態に陥ったため、ロクな結果を出せず公約違反に関しては実質的な居直りで③国民の支持も低下の一途、という悲しい状態になりつつあります。小沢・鳩山・菅がもし政権奪取前に本書を読んでいれば…まあ何一つ変わらなかっただろうな、と確信を持って思えるところが、更なる悲惨さといっていいでしょう。
 マイナスばかり書いて終わるのはいやだけどね。



政治主導はなぜ失敗するのか?

政治主導はなぜ失敗するのか? (光文社新書) Book 政治主導はなぜ失敗するのか? (光文社新書)

著者:中野 雅至
販売元:光文社
発売日:2010/07/16
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 政治主導ってキーワードももう虚しくなっちゃいましたが、みんな最初から薄々ムリなんじゃないかと思っていたんではないでしょうか。本書は元厚生官僚である著者が、政治主導と言ったって官僚憎しじゃなくて官僚を上手く使わないとダメよ、ということと、政治と官僚が相互不信に陥っていると国家運営のプロセスがデッドロックに乗り上げてどうにもならなくなっちゃう、どうしたらいいかなあというアイデア出し(相対的に薄い)を書いていて、本論自体はごもっともと感じた。
 ただしこの本のいい所は、なんというか著者が正直かつちょっと下世話なところで、国家の行政プロセスの開設に留まらず、官僚の汚さ・弱さ・でもプライドは高いしやることやってるとは思っているところ、更に政治家や学者のしょうもなさを豊富な事例で(!)描いているところであり、官僚のホンネが行間にしみだしているところでしょう。だから、読むと更に官僚が嫌いになる人もいると思います。
 ところで、かなり長い間、日本の政治は官僚を仮想敵とするバッシングで世論の支持を確保してきたところがありましたが、ここまで政治の側が劣化してくると批判していてもしょうがないのでちゃんと使おうという方向に転換せざるをえないでしょう。それで官僚側が調子に乗って既得権益の強化に走らなければトータルで相対的に良い方向には行くんだろうと思います。
 もしかするとこの「バッシング→反動的再評価」という流れを、あと数年したらマスコミについてやることになるんではないか、と予想しています。



書とはどういう芸術か 石川九楊

書とはどういう芸術か―筆蝕の美学 (中公新書) Book 書とはどういう芸術か―筆蝕の美学 (中公新書)

著者:石川 九楊
販売元:中央公論社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 内容はまあタイトルの通りで書(筆と墨で書くやつね)の起源とか意義を説明しているんですが、たぶん業界(というのかな)の共通認識ではなく著者の独自理論が8割なんではないかと思います。私は書にこれ以上入り込むつもりはないので、通説だろうと異端だろうと特に気にせず、面白く読みました。楷書が崩れて行書・草書になったわけではなく、草書が先行する公式書体(隷書)に取って代わろうとして楷書に進化したんですってよ。へええ。
 こういう本は、読んでいるとだんだん自分でも書がやってみたくなって、更に読み進むともうやったような気になるので楽しいよね。そうそう、この本は内容に新鮮な発見があって「読ませる」ものになっているのもさることながら、読みやすくかつちょっとマッチョ感のある文体のゴリゴリ感が、いい感じ。とはいいつつ、いささか偏狭で説教臭いのは鼻につきます。飲み屋で会いたくないタイプです。
 そういえば、学生のとき書道は本当に苦手だったなあ…



機密費 歳川隆雄

 機密費 機密費
販売元:セブンネットショッピング(旧セブンアンドワイ)
セブンネットショッピング(旧セブンアンドワイ)で詳細を確認する

 なぜか著者のサイン入りでした。これどこで買ったのかなあ。
 そういえば2000-2001年頃、機密費の流用って話題がありましたねえ。すっかり忘れてたけど。半年くらい前に野中さんがマスコミの重鎮や政治評論家に流れていたのをバラしちゃったのも機密費。何にせよ私はあまりよくわかっていなかったのだけれど、本書を読んで機密費に関する問題のだいたいのところはわかったような気がします。
 私の理解としては、いま日本政府が計上している「機密費」は、「国家・国益を守るために必須である活動のうち秘密裏に行われる必要がある事項」(おもに外交関係だと思うけど)という本来の目的のために使用されておらず(というかそもそも国益は何でこれを守るために何が必要かというのがちゃんと考えられておらず)、要するに国民に説明しがたい営みを機密費の名目で誤魔化している、ということなんだろうね。そもそも内閣/省庁に計上されている予算が裏で政権与党の政治工作資金になっているというのは、三権分立も何もないよねえ。そうは思っていたけどさ。
 たぶん今でもこの機密費の問題自体は続いているんだろうけれど、こういうのって一時騒いでもすぐ忘れてしまいますね。優先順位があるのはわかるけれど。誰かこれまで積みあがっている問題を一覧表にして毎年末に状況報告を兼ねて発表すればいいのではないか。指名手配者みたいに。

 うーん、長くなったのでここでいったん切ります。
 在庫はまだほとんど減っていない。文庫も含めるとあと8回くらい書かなければいけなさそう。どうしようかな。

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